FP1級実技対策ノート⑪住宅取得等資金の贈与の特例

 こんばんは。中小企業診断士のししまるです。FP1級実技対策ノート第11回。住宅等取得資金の贈与の特例についてのお話です。

住宅等取得等資金の贈与の特例の背景と歴史

 この特例は住宅建設の促進のため昭和59年度の税制改正で創設され、その後、制度の改正と延長が繰り返されています。制度の目的が住宅建設にかかる需要喚起にあるため、期限付きの立法ですが、今後も廃止となる可能性は低いと思います。
 非課税限度額について当初は300万でしたが、拡充を繰り返し、アベノミクス下における消費税引き上げのための景気対策として、平成27年度税制改正にて最大3000万まで拡大しました。(令和2年3月まで)
令和2年4月~令和3年3月までは1500万、令和3年4月~令和3年12月までは1200万に縮小予定でしたが、令和3年の税制改正により、令和3年4月~令和3年12月についての非課税限度額は1500万に据え置かれました。

住宅等取得等資金の贈与の特例の概要

 父母や祖父母からの贈与により、自宅取得のための資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度です。
 この非課税金額は、暦年課税制度の基礎控除額110万円や相続時精算課税制度の特別控除2500万円と併用することができます。
 また、相続開始3年以内の贈与となった場合でも、相続財産に算入する必要はありません。

非課税限度額

非課税限度額は下記の通りです。

①住居の費用の消費税が10%の場合

住宅取得の契約日省エネ等住宅左記以外
平成31年4月1日~令和2年3月31日3000万円2500万円
令和2年4月1日~令和3年12月31日1500万円1000万円

②前記以外

住宅取得の契約日省エネ等住宅左記以外
平成28年4月1日~令和2年3月31日1200万円700万円
令和2年4月1日~令和3年12月31日1000万円500万円

受贈者の主な要件

・贈与者の直系卑属(子、孫等)であること。
・贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。
・贈与を受けた年の合計所得額が2000万以下であること。(住居家屋面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1000万)
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与資金の全額を住居取得資金に充てること。また、同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であること。

適用となる住宅用家屋等の要件

 住宅取得資金には住宅の敷地となる土地代も含まれます。対象となる住宅は次の要件を満たす日本国内にある家屋に限られます。
・家屋の床面積が40㎡以上240㎡未満で、その家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の住居であること。
・中古住宅の場合は築20年以内であること。(耐火建物の場合は25年以内)但し、一定の耐震基準を備えたものは築年数の制限はありません。
・増改築の場合は、工事費用が100万円以上であること。(住居用部分の工事費が全工事費の2分の1以上であること)

非課税の特例の適用を受けるための手続

 非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
 尚、受贈者と一定の親族など特別な関係になる者から住宅を取得した場合は、本特例の適用を受けることはできません。

住宅等取得資金の贈与の特例と小規模宅地等の特例の関係

 住宅等取得資金贈与の特例と小規模宅地等の特例は併用可能です。相続財産の中で、現預金が多額にあり、自宅の土地の価格も高く、相続税対策を行わない場合、相続税が多額となるケースにおいて、住宅資金贈与の特例と小規模宅地等の特例を組み合わせることは有力な節税策となります。
 上記のケースにおいて、両者を組み合わせる方法の一つに被相続人の自宅として2世帯住宅を建設する方法があります。2世帯住宅の建設に際し、住宅等取得資金の贈与の特例の非課税分を相続人宛て贈与し、同贈与分を建物の建築代金の一部に充当した上で、建物については被相続人と相続人の共有持ち分とします。土地については被相続人の所有とします。この方法により、住宅等取得資金の贈与の非課税分と小規模宅地等の特例をフルに活用することが可能となります。
 上記のように被相続人と相続人の同居(二世帯住宅を含み)に問題がないケースにおいては住宅等取得資金の贈与と小規模宅地等の特例の併用に問題は生じませんが、同居しない場合は、相続人の住宅取得により小規模宅地等の特例が使えなくなることもあり、注意が必要です。
 現在被相続人と同居はしていないが、被相続人が亡くなった際は、実家を引き継ぎ、家を守りたいと思っている方もいると思います。そのような方の為に、小規模宅地等の特例において「家なき子特例」(亡くなった人の自宅を同居していなかった親族が相続する場合でも、相続開始3年以内に自宅を自己所有していない相続人であれば、「小規模宅地等の特例」の80%減額を使えるようにするという特例)がありますが、相続人が自宅を所有することにより同特例は使えなくなります。
 一般的に、小規模宅地等の特例と住宅等取得資金の特例を比較した場合、節税上の効果は小規模宅地等の特例の方が効果が高いケースが多いので、相続に際し、小規模宅地の特例を考えている方は相続前の自宅の所有については十分な検討が必要です。

まとめ

・住宅等取得資金の贈与の特例は相続税対策として有効。
・住宅等取得資金の贈与の特例は期限付きであるが、今後も継続の可能性が高い。但し、非課税金額は少なくなる可能性が高い。
・将来的に実家を引き継ぐ予定の場合は、自宅取得を行わない方が相続税上は良いケースもあるので、事前に十分な検討を行うべき。

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