FP1級実技対策ノート⑦遺言書の作成

 こんにちは。中小企業診断士のししまるです。FP1級対策ノート第7回。遺言書の作成についてのお話です。

サマリー

・費用面をかけたくないのであれば自筆証書遺言保管制度の活用が有効。
・遺言書の形式要件等の具備に自身のない方、相続知識が十分ではない方、中小企業オーナー等相続財産が多額な方は弁護士等に相談すべき。

遺言書の作成はなぜ必要か?

 遺言書がなく相続が発生した場合、往々に相続争いが発生します。相続財産が現金のみであれば、均等に分割すればよいと思われがちですが、生前の介護負担等が均等でない場合等、相続人間でそれぞれの主張が生じ、一筋縄ではいきません。ましてや中小企業オーナーの場合、相続財産は経営している会社の株式他、現金、不動産等と多岐にわたるケースが大半です。
 特に経営している会社の株式は後継者に相続を集約すべきですが、遺言書がないと、遺産分割協議により株式が分散してしまう可能性もあります。後継者に確実に会社を承継するためには生前贈与等を活用し、生前に株式を移転するか、遺言書の作成により相続を決めておくことが必要です。
 相続人間で無用なトラブルを避けるためにも、遺言書の作成は有効な対策です。

遺言書の種類と特徴、メリット デメリット

遺言書の種類、特徴、メリット・デメリットを表にまとめてみました。

自署証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
全文の筆者本人公証人制限なし
署名・押印本人本人
証人
公証人
本人
封紙には本人、公証人
証人
証人・立会人の要否不要証人2名以上公証人1名
及び証人2名以上
検認の要否不要
メリット・秘密の保持ができる
・手続きが簡便
・内容が明確である
・紛失・偽造・変造等の危険がない
・秘密の保持ができる
・紛失・偽造・変造等の危険が少ない
・自筆でなくてもOK
デメリット・紛失・偽造・変造等の危険がある
・自署または署名ができないものは作成できない。
・秘密が漏れる危険がある
・手続が煩雑で費用がかかる。
・署名のできないものは作成できない
・内容が不明確な場合、無効になったり、紛争になってしまうリスクがある。
・紛失のリスクがある。

 費用がかからず、気軽に作成できるのが、自筆証書遺言。費用は掛かるが安全確実なのが公正証書遺言。秘密証書遺言は自署証書遺言と公正証書遺言を折衷したものですが、実務上は中途半端なものとしてあまり利用者はいません。

自筆証書遺言にかかる民法の改正

 2019年1月13日より自筆証書遺言の方式の緩和が施行されました。
それまで自筆証書遺言は全文手書きが必要でしたが、この改正により財産目録についてはパソコンで作成したり、登記事項証明書や通帳の写しを自筆証書遺言に添付することが可能となりました。 この改正により、自筆証書遺言の作成負担は大幅に軽減されます。
 なお、自書によらない財産目録を添付する場合には、財産目録の各頁に遺言者による署名押印が必要です。 

自筆証書遺言保管制度

 2020年7月10日より自筆証書遺言保管制度が開始されました。
自筆証書遺言保管制度は遺言書を法務局に預けることにより紛失や発見者による偽造・変造のリスクを回避する制度です。
 この制度の活用により、安価な費用で、法務局による遺言書の保管が可能となり、相続時の遺言書の「検認」(家庭裁判所に遺言書の存在を確認してもらうこと)が不要となります。

あとがき

 相続争いを回避するために遺言書を作成したのに、遺言書の内容が不明確なため、相続争いが発生することは本末転倒です。遺言書をせっかく作成するのであれば、法的な要件を備えた書式で、自筆証書遺言保管制度を活用するもしくは公正証書遺言制度を活用するのがよいのではないでしょうか?
また、形式要件を具備していたとしても、相続に関しては遺留分への配慮等がなされていない場合は更なる相続人間の紛争の種にもなりかねません。
 相続上の法律知識が十分にあり遺言書の形式要件の具備が自力でできる方は、自力で遺言書を作成し、自筆証書遺言保管制度を活用することが費用面ではおススメですが、中小企業オーナーで財産が相応にある方は、まずは弁護士等の専門家に相談することが重要です。

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