FP1級実技対策ノート⑧遺留分とは

 こんにちは中小企業診断士ししまるです。本日は遺留分についてです。前回遺言書についてお話しましたが、遺言書を作成する場合には遺留分について十分配慮することが必要です。遺留分を侵害する遺言書は、意図したとおりの相続ができないばかりか、相続人間のトラブルの種になる可能性があります。

遺留分とは

 遺留分は、法定相続人中、配偶者および直系卑属、直系尊属に最低限保障される遺産取得分です。上記の相続人は、主張すれば必ず一定の財産が取得できます。遺留分は、遺言の内容よりも強い権利です。
 一方、法定相続人であっても、兄弟姉妹や、甥、姪には遺留分は認められません。

直系卑属~子、孫等 直系尊属~親、祖父母等

遺留分の割合

・相続人が直系尊属のみの場合~遺留分算定基礎財産の1/3
・その他の場合~遺留分算定基礎財産の1/2
個々人の遺留分は上記遺留分×「法定相続分」となります。

尚、遺留分権利者が遺留分を放棄した場合でも、他の遺留分権利者の遺留分は増加しません。

遺留分算定基礎財産とは

遺留分算定の財産は相続税上の財産とは異なりますので注意が必要です。

〇遺留分算定上の財産=相続開始時の相続財産+相続人に対する生前贈与(10年以内)+第3者に対する生前贈与(1年以内)ー相続債務
〇相続税算定上の財産=相続開始時の相続財産+相続人に対する生前贈与(3年以内)+みなし相続財産(死亡退職金、死亡保険金)ー相続債務

遺留分を侵害するとどうなる

 遺言また生前贈与により遺留分が侵害された場合でも、遺言書による遺贈や生前贈与は有効です。但し、遺留分権利者は遺留分侵害額請求権を有することとなります。遺留分侵害額請求権は裁判で請求する必要はなく、遺留分を侵害する者に対し、遺留分侵害額請求の意思表示をするだけで足ります。
 尚、遺留分侵害額請求権は遺留分が侵害されていることを知った時から1年以内または相続開始から10年以内に請求を行わないと消滅します。
 中小企業オーナーの場合、相続財産の中で経営している会社の株式が多額で、かつ現預金が少ない場合は、遺留分侵害請求が発生すると、後継者に大きな負担を強いる可能性があります。
 相続人間で無用な争いが生じないためには遺留分に配慮した遺言書の作成が必要です。

遺留分に関する民法の特例

 中小企業オーナーが、生前贈与や遺言によって後継者に自社株式を集中し、事業を承継しようとしても、「遺留分」によってうまくいかない場合があります。
 推定相続人が複数いる場合、後継者に自社株式を集中して承継させようとしても、遺留分を侵害された相続人から遺留分に相当する財産の返還を求められた場合、多額の資金が必要になるなど、事業承継にとっては大きなマイナスとなる場合があります。
 このような問題に対処するため、経営承継円滑化法により「遺留分に関する民法の特例」が規定されました。(下記①②③)
 この特例を適用するためには遺留分を有する「推定相続人全員と書面で合意」し、1か月以内に「経済産業大臣の確認」を取り、「家庭裁判所の許可」を得ることが必要です。

①除外合意
現経営者から贈与等された自社株式について遺留分算定基礎財産から除外する。
②固定合意
現経営者から贈与等された自社株式の遺留分算定基礎財産への算入する際の価格を合意時の時価に固定する。
③自社株式等以外の財産を遺留分算定基礎財産から除外
上記①②を行う際に、自社株式以外の財産についても遺留分算定基礎財産より叙階することができる。但し、贈与財産の価格を固定することはできない。

納税猶予制度と遺留分

 「事業承継にかかる納税猶予制度の特例」により株式時価が高額の中小企業の事業承継はずいぶんと楽になりましたが、同特例を利用しても、「遺留分」の問題は解決しません。その対策として「遺留分にかかる民法の特例」が制定されましたが、この特例の適用のためには推定相続人全員の同意が必要です。
 実際の適用において、推定相続人全員の同意は相続が間近になればなるほど、困難化することが予想されます。会社の円滑な継承のためには早めに相続対策を検討することが重要です。

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