FP実技対策ノート⑧ 小規模宅地等の特例の有効活用
こんにちは中小業診断士ししまるです。今日はFP1級実技帯対策ノート第8回。相続税対策として効果の高い小規模宅地等の評価減の有効利用についてのお話です。
目次
小規模宅地等の特例とは
小規模宅地の特例とは、①自宅の土地②事業用の土地③賃貸事業用の土地について、相続税法上の評価を最大80%減額できるとても節税効果が高い特例です。
亡くなった人が住んでいた先祖代々の土地や事業をしていた土地について、その土地が高額である場合、そのすべてに相続税がかかると相続税が多額となり、その土地を手放さないといけなくなるかもしれません。そのような状況を回避するために小規模宅地等の特例ができました。
小規模宅地等の特例適用の要件
小規模宅地等の特例適用の要件は下記の通りです。
区分 | 相続開始直前の状況 | 要件 | 対象上限面積 および減額割合 |
①住居用 | 亡くなった人の住居 | ・配偶者が取得した場合 ・同居親族が取得し、申告期限まで居住し、かつ保有している場合 ・配偶者および同居親族がいない場合に、一定の別居親族が取得し、申告期限までにその宅地を保有している場合 | 330㎡まで80% |
①住居用 | 生計一親族の住居 | ・配偶者が取得した場合 ・生計一親族が取得し、申告期限まで居住し、かつ保有している場合 | 330㎡まで80% |
②事業用 (個人事業) | 亡くなった人の事業用 | ・親族が取得および事業を承継し、申告期限まで保有しかつその事業を営んでいる場合 | 400㎡まで80% |
②事業用 (個人事業) | 生計一親族の事業用 | ・その生計一親族が取得し、申告期限まで保有し、かつ、その事業を営んでいる場合 | 400㎡まで80% |
②事業用(法人) | 同族会社の事業用 | ・被相続人等の持ち株割合が50%超おの同族会社の事業用宅地等を申告期限までに同族会社の躍進である親族が取得し、申告期限まで保有し、かつその同族会社が事業を営んでいる場合 | 400㎡まで80% |
②事業用(法人) | 同族会社の事業用 | ・上記には該当しないが、同族会社への賃貸は継続する場合 | 200㎡まで50% |
③不動産貸付用 | 亡くなった人の貸付用 | ・親族が取得および事業を承継し、申告期限まで保有し、かつ、その貸付事業を営んでいる場合 | 200㎡まで50% |
③不動産貸付用 | 生計一親族の貸付用 | ・生計一親族が取得し、申告期限まで保有し、かつその事業を営んでいる場合 | 200㎡まで50% |
小規模宅地等の特例の併用
①住居用と②事業用については完全併用可能ですが、③賃貸用と併用する場合は①②が上限まで利用していない場合で、①②の余った枠の部分しか③の利用はできません。
その場合の計算式は下記の通りとなります。
①×200/330+②×200/400+③≦200㎡
小規模宅地等の特例活用の注意点
下記のものについては特例の対象外となります。
①相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等
②「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除」の適用を受けた特例事業受贈者に係る贈与者又は「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除」の適用を受ける特例事業相続人等に係る被相続人から相続又は遺贈により取得した特定事業用宅地等
③相続開始3年以内に新たに「事業用とした土地」「貸付用とした土地」。(例外規定あり)
相続開始3年以内でも認められるケースは?
節税目的の駆け込み適用を防止すべく、原則として、相続開始3年以内に新たに「事業用とした土地」「貸付用とした土地」は小規模宅地等の特例の適用は認められませんが、下記の条件を満たした場合は適用が認められます。
〇相続開始3年以内に「事業用とした土地」
宅地等の相続税評価額 × 15% ≦ 宅地等の上で事業供用されている減価償却資産の価額
~節税目的ではなく、その土地で事業を行っているケースを救うものです。
〇相続開始3年以内に貸付用とした土地
相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付業を行っている場合には、相続開始前3年以内に購入された土地
~節税目的ではなく、元から賃貸事業を行っているケースを救うものです。
小規模宅地等の特例を上手に活用するためには
小規模宅地等の特例の活用は相続税の圧縮に極めて効果が高いものです。金額的な制限ではなく、面積による制限ですので特に土地の単価が高い地域においてはより高い効果を得ることができます。
例えば、中小企業オーナーで、対策を行わない場合に多額の相続税の発生が予想されるケースにおいて、①地価の高い地域に自宅用土地を買い、相続人と同居する。(2世帯住宅も可です。)②会社の事業用資産の土地をオーナー所有とする。ことで大幅に相続税の圧縮が可能となることがあります。
但し、相続間際にあからさまな相続対策としての活用は、税務当局による否認リスクが常にありますので、前もっての対策が何より重要です。