FP1級実技対策ノート⑫教育資金の一括贈与にかかる非課税制度
こんにちは中小企業診断士のししまるです。本日はFP1級実技対策ノート第12回。教育資金の一括贈与にかかる節税策についてのお話です。
目次
教育資金一括贈与にかかる非課税制度の背景
本制度は、高齢者世代の保有する金融資産の消費支出の高い子育て世代への移転を促進することで、子育て世代を支援し、経済活性化に寄与することを期待して創設されました。本制度が創設された平成25年度税制改正では、同時に相続税にかかる基礎控除の大幅な減額がおこなわれています。
本制度は期限付きの立法ですが、創設後延長を繰り返し、令和3年の税制改正で令和5年3月31日までの延長が決まりました。
教育資金の一括贈与の非課税制度の概要
祖父母や父母から、子や孫に対し、教育資金を一括で贈与する場合に最大1500万円まで非課税となる制度です。そもそも、祖父母や親からの教育資金の必要な都度の拠出は非課税ですが、本制度の活用により、将来にわたる教育費の一括贈与を非課税で行うことが可能となります。
相続税対策として短期間に財産を圧縮したい場合に教育資金の一括贈与制度を活用すると、贈与税がかかることなく、まとまった資金の贈与が可能となることから、節税策としても活用されています。
主な制度要件
主な制度要件は下記の通りです。
項目 | 要件 |
期限 | 令和5年3月31日まで |
受贈者 | ①30歳未満②前年の所得金額1000万円以下 |
贈与者 | 受贈者の直系尊属 |
限度額 | 1500万(学校以外への支払いは500万が限度) |
資金使途 | ①学校等に直接支払う入学金、学費、学用品、行事費用 ②学校等以外に直接支払う塾代、交通費、留学渡航費等 受贈者が23歳に達した以降の塾代等については教育訓練給付金の対象となる教育訓練の受講費用に限定されます。 |
手続き | ①金融機関等にて教育資金口座を開設し、金融機関等を経由で教育資金非課税申告書を所轄税務署に提出。 ②教育資金口座からの払い出しについては、直接支払いか、立て替え払い後領収書提出かを事前に選択する。 |
終了事由と課税 | ①受贈者が30歳に達した場合(但し、学校に在籍中である場合や一定の教育訓練を受けている場合は40歳まで延長可能)残額に贈与税が課税される。 ②受贈者が死亡した場合、残額があっても課税なし。 ③口座残高がゼロとなり、その口座にかかる終了の合意があった場合。 |
贈与者死亡時の課税 | 贈与者死亡時の残額を相続財産に加算。(相続人でない孫等は2割加算対象) 但し、下記に該当する場合は相続財産に加算されない。 ①受贈者が23歳未満である場合 ②学校に在学中である場合 ③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合 |
他の制度との併用 | 他の制度(暦年課税の基礎控除、相続時精算課税制度の基礎控除、住宅等取得資金贈与の非課税制度、結婚子育て資金の一括贈与の非課税制度)との併用可能 |
メリットとデメリット
メリット
・子や孫等に対する教育資金であれば、1500万まで非課税で一括贈与できる。
・暦年贈与の基礎控除とも併用可能。
・使途を教育資金に限定して贈与を行うことができる。
デメリット
・受贈者の資金払い出しにかかる手続きが煩雑。使途等につき細かな確認が必要。
・教育資金として使いきれなかった場合は贈与税がかかる。
・特定の孫等に贈与をした場合、子供達の仲たがいの原因となることがある。
まとめ
・相続税対策を短期間に行いたい場合は、教育資金の一括贈与は有効な手段。
・使いきれなかった額については贈与税が発生することもあるので、贈与額は教育費として見込まれる額に限定すべき。
・相続対策に時間をかけることが可能であれば、暦年贈与と、教育費の都度負担の方が、簡単。
相続税対策をそれほど気にする必要がない方であれば、本制度はメリットよりデメリットの方が多い気がしますが、計画的な相続税対策が必要な場合は、本制度は十分活用可能です。
例えば中小企業オーナーの相続対策において、法人株式の除外合意が必要なケースがあると思います。除外合意を円滑に行うためには、法人株式を相続する相続人と、法人株式を相続しない相続人間の相続財産のバランスに考慮する必要があります。このような場合に、法人株式を相続しない相続人の子等に対し、本制度を活用した教育資金の一括贈与を提案することは、相続人間のバランスをとる上で有効な手段となるのでなないでしょうか。