FP1級実技対策ノート⑬結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度

こんにちは中小企業診断士のししまるです。本日FP1級実技対策ノート13回。結婚・子育て資金の一括贈与にかかる非課税措置のお話です。

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度の背景

 本制度は前回の教育資金の一括贈与の非課税制度と同じく、高齢者世代から子育て世代への資産の移転を通じ、経済が活性化することを期待して創設されました。平成27年度税制改正で創設されたので、教育資金の一括贈与の創設の2年後の創設です。
 平成27年度税制改正では平成27年10月より予定していた消費税率10%への引き上げを平成29年4月に変更しました。平成29年4月の消費税引き上げを確実に行うための景気刺激策の一つとして結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度は誕生しました。
 創設当初は平成31年3月31日までの期限付きでしたが、相続税にかかる他の制度と同じく、延長を繰り返しており、令和3年度税制改正で令和5年3月31日までの延長が決定しました。但し、利用件数が少ないこともあり、次回の改正時には廃止が検討される予定です。

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度の概要

 祖父母や父母から、子や孫に対し、結婚・子育て資金を一括で贈与する場合に最大1000万円まで非課税となる制度です。そもそも、祖父母や親からの結婚・子育て資金の必要な都度の拠出は非課税ですが、本制度の活用により、将来にわたる結婚・子育て資金の一括贈与を非課税で行うことが可能となります。
 教育資金の一括贈与と同じく、短期間に財産を圧縮したい場合に結婚・子育て資金の一括贈与制度を活用すると、贈与税がかかることなく、まとまった資金の贈与が可能となりますが、教育資金とは違い、贈与者が死亡した場合、残金は相続財産に課税されることから、節税策としてのメリットは限定的です。
上記の理由もあり、教育資金の一括贈与にくらべ、結婚・子育て資金の一括贈与制度の活用状況は低いものとなってます。

主な制度要件

主な制度要件は下記の通りです。

項目要件
期限令和5年3月31日まで
受贈者①20歳以上50歳未満②前年の所得金額1000万円以下
贈与者受贈者の直系尊属
限度額1000万(結婚費用は300万円以下)
資金使途①【結婚関連】挙式関連費用、新居に関する移転費用等
②【子育て関連】不妊治療・出産に関する費用。小学校未満の子の医療費・幼稚園、保育園等の費用
手続き①金融機関等にて教育資金口座を開設し、金融機関等を経由で結婚・子育て資金非課税申告書を所轄税務署に提出。
②結婚・子育て資金口座からの払い出しについては、直接支払いか、立て替え払い後領収書提出かを事前に選択する。
終了事由と課税①受贈者が50歳に達した場合、残額に贈与税が課税される。
②受贈者が死亡した場合、残額があっても課税なし。
③口座残高がゼロとなり、その口座にかかる終了の合意があった場合。
贈与者死亡時の課税贈与者死亡時の残額を相続財産に加算。(相続人でない孫等も2割加算対象:令和3年の税制改正で変更)
他の制度との併用他の制度(暦年課税の基礎控除、相続時精算課税制度の基礎控除、住宅等取得資金贈与の非課税制度、教育資金の一括贈与の非課税制度)との併用可能

メリットとデメリット

メリット
・結婚・子育て資金を一括贈与する際に1人につき1,000万円まで非課税で贈与できる。
・両親や祖父母の資産を早期に移転することで、子や孫の経済的不安を取り除くことができる。
デメリット
・受贈者の資金払い出しにかかる手続きが煩雑。使途等につき細かな確認が必要。
・50歳までに使い切れないと残額に贈与税がかかる。
・贈与者が亡くなった場合、残額は相続財産に加算される。

まとめ

・結婚・子育て資金の一括贈与にかかる非課税制度は相続税対策としては効果が低い。
・子・孫が安心して結婚・子育てを行うためのプレゼントとしては活用可能。
・教育資金の一括贈与と同じく、中小企業オーナーの相続対策において、法人株式の除外合意が必要な場合、相続人間のバランスをとる手段の一つとして結婚・子育て資金の一括贈与も有力な手段となる。

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