FP1級実技対策ノート⑱特定同族会社事業用宅地等の特例

 こんにちは中小企業診断士のししまるです。本日はFP1級実技対策ノート18回。特定同族会社事業用宅地のお話です。

特定同族会社事業用宅地の特例とは

 「特定同族会社事業用地の特例」とは相続にかかる小規模宅地等の特例の一つで、被相続人が経営する会社に個人の土地を貸し付けていた場合、相続人がその会社の役員であることを条件に適用できます。
 会社に貸し付けていた土地の内400㎡までの部分につき相続上の評価額を80%減額できるため、相続税の節税上大変魅力がある制度となっています。
 尚、この制度を利用するには土地上に建物や構築物があることが条件で青空駐車場や資材置き場等は利用できません。
 個人的に法人と個人の資産は極力分離した方がよいと考えていますが、こと相続税への対策を考える上では、個人の所有地を法人に貸付け、その上に法人が建物を建てることにより、「特定同族会社事業用宅地の特例」を活用することはとても有効な策となります。

社長の土地の上に会社名義の建物を建てる場合の注意点

 社長個人の土地の上に会社名義の建物を建てる場合、借地権が発生します。借地権契約に際し、通常権利金を授受する慣行がある地域で、同族会社だからと言って権利金の授受を行わず、土地の賃貸借契約を締結すると、法人側に権利金の贈与があったものとみなされ借地権の認定課税が行われます。
 但し、①法人側で借地権と未払金を両建てで経理処理する。
    ②相当の地代(※)を授受し、改訂方法の届出をおこなう。
    ③無償返還の特約を締結し、無償返還の届出をおこなう。
のいづれかを行うことにより、認定課税を回避することができます。
(※)相当の地代とは、更地価格の6%相当の地代(年額)で、一般的な事業用借地の相場である4%と比較し、高額な地代となります。

会社への貸付地の課税関係

社長個人の土地を貸し付け、会社名義の建物を建設した場合の課税関係についてまとめてみました。

借地権と未払金を両建て計上        相当の地代
を授受
※(固定方式)
相当の地代を授受      
※(改訂方式)
無償返還の届け出       
借地権発生する
地価の上昇に
伴い借地権が
自然発生        
発生しない    発生しない
借地契約時の経理処理・個人
未払金計上金額を譲渡所得として課税
・法人
借地権を資産計上
なし
なしなし
貸付地の相続税評価・個人
自用地評価×(1-借地権)
・法人
借地権
・個人
自用地評価
-自然発生借地権
・法人
自然発生借地権
・個人
自用地評価×80%
・法人
自用地評価の20%相当額をその株式の純資産価格による評価上、計上
・個人
自用地評価×80%
・法人
自用地評価の20%相当額をその株式の純資産価格による評価上、計上
特定同族会社事業用宅地の特例対象対象対象・賃貸借契約の場合は対象
・使用貸借契約の場合は対象外

※相当の地代の授受 固定方式~相当の地代を当初設定金額に据え置く方法
      改訂方式~地価の上昇に応じ相当の地代を改訂する方法

まとめ

・個人の所有地に法人名義の建物を建設し、「特定同族会社事業用宅地の特例」を活用することの相続税対策上の効果は大きい。
・個人の所有地に法人名義の建物を建設する際に借地権の認定課税の対象とならないよう注意が必要。
・賃貸借契約を結ばず、賃料の授受もない場合は使用貸借とみなされる。使用貸借の場合は「特定同族会社事業用宅地の特例」は適用できない。

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