FP1級実技対策ノート⑲建蔽率と容積率
こんにちは中小企業診断士のししまるです。本日はFP1級実技対策ノート19回。不動産取引における容積率と建蔽率の話です。土地の上に建物を建てる場合に建蔽率と容積率により敷地面積と延床面積の上限が決まります。土地の価値の多くは建物を建設し、活用することにあるので、建蔽率と容積率は土地の価格に大きな影響をあたえます。今回は特に建蔽率と容積率が土地のかかるに与える影響について分かり易くお話します。
目次
建蔽率とは
建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことです。例えば100坪の土地で建蔽率が80%の場合、最大80坪の建築面積の建物を建てることができます。
「建蔽率(%)=(建築面積/敷地面積)×100」
建蔽率は都市計画で用途地域ごとに30%~80%の範囲で定められていますが、下記の場合に建蔽率の緩和措置があります。(FP試験頻出)
<建蔽率の緩和措置>
①角地 | 10%加算 |
②‐⑴防火地域の耐火建物 | 10%加算 |
②-⑵準防火地域の耐火建物または準耐火建物 | 10%加算 |
③ ①②を同時に満たす場合 | 20%加算 |
④ 建蔽率が80%の地域で、防火地域内にある耐火建物 | 建蔽率の制限なし |
※敷地が2つ以上の建蔽率の異なる地域にわたる場合は、それぞれの地域の建蔽率を加重平均する。
※建築物の敷地が防火地域の内外にわたる場合、建物の全部が耐火建物である場合はその敷地はすべて防火地域内にあるものとして建蔽率の緩和を適用する。
※建物の敷地が準防火地域の内外にわたる場合、建物の全部が耐火建物または準耐火建物等であるときは、その敷地はすべて準防火地域にあるものとみなして建蔽率の緩和を適用する。
建蔽率が土地の価格に与える影響
建蔽率が高ければ高いほど、その土地の上に建てる建物の設計の自由度が増します。
建蔽率以外の条件が同じで、建蔽率だけが異なる土地がある場合、建蔽率の高い土地の方が、高い価格となります。但し、建蔽率の差と価格の差の割合については、一般的な相場というものはないようです。(あれば教えてください。)
容積率とは
容積率とは、建物の延べ床面積の敷地面積に対する割合です。例えば敷地面積が100坪で容積率が200%の場合は延床200坪の建物を建てることが可能です。
「容積率(%)=(延べ床面積/敷地面積)/100」
建蔽率は都市計画で用途地域ごとに50%~1300%の範囲で定められていますが、前面道路が12Ⅿ未満の場合は都市計画上の容積率と「前面道路の幅員×法定乗数」の内低い方が限度となります。(FP試験頻出)
用途地域 | 法定乗数 |
住居系 | 4/10 |
商業系工業系 | 6/10 |
※建築物の敷地が容積率の異なる2つの地域にまたがっている場合は加重平均して計算します。
(特定道路による容積率制限の緩和)
敷地の前面道路の幅員が6m以上12m未満でかつ70m以内で幅員15m以上の道路(特定道路)に接続している場合、容積率が加算(緩和)されます(建築基準法第52条第9項)。
広幅員道路に接する敷地の容積率と、それに隣接する狭い幅員の道路に接する敷地の容積率との間の急激な差を防ぐための緩和措置です。
容積率の加算は、次の計算によります。(FP試験頻出)
W1=((12-W2)✖(70-Ⅼ))/70
w1:前面道路幅員に加算れる数値
w2:前面道路の幅員(m)
Ⅼ:特定道路までの距離(m)
(容積率不算入規定)
容積率の算定の基礎となる延べ床面積の計算にあたっては次の特例があります。
車庫 | 車庫の床面積は建物全体の延べ面積の5分の1を限度として延べ面積に算入しない |
住居の地階 | 地階(天井が地盤から1Ⅿ以下)の床面積は建物全体の延べ面積の3分の1を限度として延べ面積に算入しない |
共同住宅の共用部分 | 共用部分の床面積は延べ面積には算入しない |
エレベーターの昇降路 | 延べ面積に算入しない。 |
老人ホーム等 | 共用廊下等を床面積から除外 |
容積率が土地の価格に与える影響
容積率が土地の価格に与える影響は極めて大きいものとなります。特にその土地を賃貸物件として収益化する場合や分譲マンションとして売却する場合、容積率はその収益に直結することから、土地の価格も容積率に比例したものとなります。
上記の用途の適地においては「容積率100%あたりの土地単価」(一種単価)が不動産売買における相場の指標として用いられます。
隣地購入による建蔽率・容積率の変化
下図ににおいて、指定容積率は400%、全面路線価による容積率制限が6/10の地域とします。このケースで甲土地と乙土地の所有者が別の場合、甲土地の容積率は400%、乙土地の容積率は360%となります。
このケースで乙の所有者が甲土地を購入し、甲乙一体の土地として利用すると、乙土地甲乙土地の前面道路は8Ⅿとみなされるため、乙部分の容積率も400%となり、乙土地の価値は大幅に上昇します。
このように隣地との一体利用により容積率、建蔽率が上昇するケースにおいては、既存の土地の価値も増加が見込まれますので、チャンスがあればこのような隣地は是非購入を検討すべきです。
まとめ
・土地の価格はどんな建物が建設可能かによって決まります。
・どんな建物が建設可能かは建蔽率と容積率に大きく左右されます。
・建蔽率と容積率はその土地の用途地域と接道状況に大きく左右されます。
・上記より土地の価値における接道状況は極めて重要です。
・購入により接道状況がよくなる隣地は積極的な購入をお勧めします。