【FP1級監修】求職者給付金(失業保険)で損しない方法

求職者給付金は失業された方が、安定した生活を送りつつ、再就職できるように、求職活動を支援するための給付ですが、離職理由により、受給期間等が大きく変わってしまします。退職、転職する際は制度内容を十分理解した上で対応を考えることにより、より充実した給付を受けることが受けることが可能な場合があります。

雇用保険の求職者給付(基本手当)とは

求職者給付の対象者は離職し、「就職したいという積極的な意志といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにも関わらず、就職できない状態」にある方で、下記の資格を満たしている方となります。

①定年・自己都合退職の場合 離職日の以前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間(雇用保険)があること。
②倒産・会社都合退職(特定受給資格者)および特定理由離職者の場合 離職日の以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があること。

基本手当の給付日数は下記のとおりです。

①自己都合退職の場合

②倒産・会社都合、の場合(特定受給資格者、特定理由離職者)

特定受給資格者・特定理由離職者とは

上記の通り、自己都合の退職と、倒産解雇等の特定受給資格者、特定理由離職者では給付日数が大きく異なります。また、支給の開始も解雇・定年の場合は求職の申込み後7日間の待機後ですが、自己都合の場合は7日間+2ヶ月後からとなります。
では特定受給資格者・特定理由離職者とはどのような要件でしょうか?

特定受給資格者の範囲は下記の通りです。

  1. 「倒産」等により離職した者(1) 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者(2) 事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者(※)及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者※  事業所において、30人以上の離職者が生じることが予定されている場合は、再就職援助計画の作成義務があり、再就職援助計画の申請をした場合も、当該基準に該当します。
     また、事業所で30人以上の離職者がいないため、再就職援助計画の作成義務がない場合でも、事業所が事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる者に関し、再就職援助計画を作成・提出し、公共職業安定所長の認定を受けた場合、大量雇用変動の届出がされたこととなるため、当該基準に該当します。(3) 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者(4) 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者
  2. 「解雇」等により離職した者(1) 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者(2) 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者(3) 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者(4) 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)(5) 離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者(6) 事業主が法令に違反し、妊娠中若しくは出産後の労働者又は子の養育若しくは家族の介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠したこと、出産したこと若しくはそれらの制度の利用の申出をし、若しくは利用をしたこと等を理由として不利益な取扱いをしたため離職した者(7) 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者(8) 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(9) 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(8)に該当する場合を除く。)(10) 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者(11) 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)(12) 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者(13) 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

特定理由離職者の範囲は下記の通りです。

  1. 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)(上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(8)又は(9)に該当する場合を除く。)(※補足1)
  2. 以下の正当な理由のある自己都合により離職した者(※補足2)(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者(4) 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者(5) 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者(a) 結婚に伴う住所の変更(b) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼(c) 事業所の通勤困難な地への移転(d) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと(e) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等(f) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避(g) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避(6) その他、上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(11)に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等

特定受給資格者のポイント

特定受給資格者のポイントは2(5)の残業規定。3ヶ月連続で45時間、またはいずれか1ヶ月で100時間を超える残業がある場合は特定受給資格者となります。
但し、サービス残業等で実態は上記に該当するのに、残業を適正に申告していなかった場合は、会社側に実態を認めてもらうことが条件となります。残業の多さが原因で会社をやめる場合は、退職前、3ヶ月は実態の残業を申告するようにすれば、自己都合退職でも、特定受給資格者となりえます。

特定理由離職者のポイント

特定理由離職者のうち(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者については上記により業務の遂行や通勤が困難になったことが必要です。体調不調で離職せざるを得ないケースは多々あると思いますが、上記の認定のためには医師の診断書が必要です。
体調が思わしくない場合は迷わず、医師の診断を受けておきましょう。

会社都合退職後、失業保険を使わず、再就職し、短期間で自己都合退職する場合

転職後、再就職先に馴染むことができず、短期間で退職することは往々にしてあることと思います。その場合、転職前に会社都合退職で受給資格決定を受けていれば、会社都合の退職の適用を引き続き受けることができますが(給付の残額を受けることができる)受給資格決定を受けていない場合は、最後の離職票の適用となります。(最後の離職票が自己都合退職であれば、自己都合による給付日数、支給の開始は2ヶ月後)

まとめ

自己都合退職と特定受給資格者、特定理由資格者ではその手当に大きな差がでてきます。給付日数もそうですが、給付制限期間等も大きな差です。
退職せざるを得ないと思った場合、特定受給者、特定理由離職者への該当可否等を十分に確認いただき、後悔のない離職とすることが、その後の生活、転職活動におおきな余裕をもたらします。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です