FP1級実技対策ノート㉑相続税対策としてタワーマンション

こんにちはお金の総合コンサルタントししまるです。本日はFP1級実技対策ノート21回。相続税対策としてのタワーマンション購入について考察してみました。

サマリー

・相続税対策としてタワーマンション購入は節税効果は極めて大きい。
・節税策としてのマンション購入には税務当局による否認リスクあり。
・節税策としては効果も高いが、リスクも高い。一般的にはおススメできない。

タワーマンション購入が節税策となる本当の理由

タワーマンションの購入が節税策となる理由は、市場価格と相続税評価額の差がとっても大きいから。都内の高額物件ではその差は10倍以上になることもあるようです。市場価格とは実際に物件を売買する時の価格、相続税評価額は相続税の計算に用いる価格です。
 ではなぜ、タワーマンションは市場価格と相続税評価額が大きいのでしょうか? 
 理由は以下の3点です。
 【理由① 相続税上の不動産の評価方法によるもの】
 タワーマンションに関わらず、不動産については市場価格>相続税評価額となります。土地についての相続税評価額は一般に市場価格の80%、建物については40%~70%程度の評価となります。タワーマンションについては物件価格に占める土地代部分の割合が低く、建物部分の割合が高いため、ざっくりいうと相続税評価額は市場価格の50%程度になります。
 【理由② 高層階プレミアムによるもの】
 タワーマンションの高層階と低層階では同じ広さでも約2倍の価格差(実売価格)があることはざらです。これは眺望等によるプレミアムによるものですが、相続税評価上は原則的には同じ建物であれば、高層階も低層階も同一の価格となります。2017年の改正により高さ60Ⅿを超えるタワーマンションにおいては、低層階と高層階における固定資産税評価額の見直しが行われましたが、改正後も10%程度の価格差にとどまっています。ここでもざっくりいうと高層階における低層階との相続税評価額と市場価格との乖離は50%程度となります。
 【理由③ タワーマンションプレミアムによるもの】
 近年タワーマンションの人気により、本来的な価値(?)と比較し、市場価格が高騰しています。賃貸用不動産としてみた場合、都内の新築マンションの利回りは4%前後といわれていますが、タワーマンションの場合は2%前後となるようです。ここでもざっくりいうと、市場価格と本来的な価値の乖離は50%程度となります。

タワーマンション(高層階)の市場価格と相続税評価額の差は上記①~③により、
①50%✖②50%✖③50%=12.5% となります。(8倍の価格差となります。)

小規模宅地等の特例 

 小規模宅地等の特例とは、①亡くなった人が住んでいた土地②事業をしていた土地③貸していた土地について、一定の要件を満たす場合は相続税評価額を①②については80%、③については50%オフできる特例です。
 ①については330㎡以内②については400㎡以内③については200㎡以内の制限があり、①②については完全併用可能ですが、①②と③の併用については①×200/330+②×200/400+③≦200㎡が上限となります。
この特例は相続税評価を下げる上で非常に強力な特例です。この特例の制限は土地の面積によるので、坪単価が高い土地ほど有効度は増します。
 都内のタワーマンションの場合、土地の坪単価も高く、持分面積が非常に小さいため、上記特例の有効活用が可能となります。
 試しに六本木の最も高価格地点である「港区六本木4-9-5」(955万0000円/m2)にタワーマンションを建てた場合に、小規模宅地等の特例(①住宅)を適用したケースを試算してみると、
 前提条件 専有面積200㎡ 価格10億円 最上階
      容積率800% 建物坪単価100万

      ⇒土地持分 200㎡/800%=25㎡ 
       土地価格25㎡×955万=2億3875万         
       建物価格200㎡×100万/3.3㎡×1.1✖0.7=4,666万
合計2億8541万

 小規模宅地等の特例を適用
⇒土地2億3875万×0.2=4,775万
建物4666万
  合計9,441万  時価との差額9億559万 効果絶大ですね。

税務当局による否認リスク

 市場価格と相続税評価額に大きな乖離が生じると、適切な相続財産評価が行われなくなってしまいます。
そこで税務当局には財産評価基本通達第1章第6項という伝家の宝刀があります。「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」というもので、不動産等の売買が明らかに節税目的で行われた場合、相続税評価額を市場価格により行うよう税務当局は指示できるというものです。
タワーマンションを活用した節税事例、賃貸不動産を活用した節税事例で税務当局と納税者で裁判となりましたが、いずれも税務当局が勝訴しています。

 相続税の節税だけを目的とした不動産購入には常に税務上の否認リスクがありますので、十分な注意が必要です。

あとがき

 タワーマンション購入による節税はタワーマンション自体プレミアムおよび高層階プレミアムによるところが大きいのではないでしょうか?タワーマンションの高層階プレミアムに価値を感じる相続人がいる方にはおススメできるが、単純な相続対策としてはおススメできないと考えます。
 相続後直ぐに売却した場合、税務当局より否認されるリスクもあり、同リスクを回避する方法は売却を行わず所有し続けること。賃貸資産としてみた場合、共益費、修繕積立等のコストが高く、利回りは低い。タワーマンションに住みたい相続人がいる場合は良いが、そうでない場合は他の節税方法を考えた方がよいと思います。


Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です